個人事業主の休業損害
1 計算式
個人事業主の休業損害の計算式は、給与所得者等と同じく、次のとおりです。
「収入日額(1日あたりの収入)×休業日数」
2 収入日額の基本的な考え方
個人事業主の場合、売上から経費を控除した金額を収入(年収)と考えていきます。
具体的には、事故前年度の確定申告書の申告所得額を基礎とし、これを365日で割って、収入日額を算出します。
ただし、事業の内容等によっては、年度によって収入の変動が大きい場合もあり、その場合には、事故前数年分の平均を365日で割って算出する場合もあります。
青色申告特別控除額は経費性がないため、所得に加算して考えます。なお、自賠責基準では、一律、収入日額は6100円とされています。
以上を踏まえて、事業所得額700万円、青色申告特別控除額65万円の事案を考えてみます。
この場合の収入日額は、2万0959円となります(700万円+65万円)÷365日=2万0959円)。
3 収入日額の注意点
⑴ 専従者控除
親族を従業員として給与を支払っている場合には専従者控除の制度があります。
しかし、給与の支払った申告をしていても、実際には親族が就労していなかったという場合には、その給料分は経費性がないため、所得に加算すべきことを主張することができます。
⑵ 申告外収入
個人事業主の場合に、申告額よりも実収入の方が多いということもあるかと思います。
その場合に、実収入額を立証して、それをもとに収入日額を算出すべきと主張することもできます。
しかし、自ら所得額を申告していることもあり、裁判実務では、実収入について厳格な立証が求められています。
⑶ 確定申告していない場合
個人事業主の中にも、個人事業主になったばかりで事故に遭った場合や、所得が極めて少ない場合には確定申告をしていない場合もあります。
その場合でもただちに収入が否定されるわけではありません。
この場合には、収支計算書を作成して所得額を算出したり、賃金センサスを参考に所得額を算出する方法があります。
⑷ 固定費の 扱い
休業した場合には、得られるべき収入が得られなくなっただけでなく、休業中も支出を余儀なくされる固定費も損害として考えることができます。
この場合、休業中の休業損害を算定する際に、所得に固定費を加えて収入を算出することになります。
固定費には、典型的には、賃料、従業員への給料、損害保険料、減価償却費などがありますが、事業内容に応じてそのほかにも固定費にあたるものがあれば、積極的に主張していくべきでしょう。
4 休業日数
休業日数は、基本的に実通院日数を基礎としつつ、傷害の内容・程度、事業の内容、事業への支障の程度などを考慮して、個別具体的に考えていくことになることが多いように思います。
5 代替労働を利用した場合
怪我で働けない代わりに人を雇用したことで、売上を維持したような場合には、その雇用に要した費用を休業損害として請求することができます。
6 弁護士にご相談を
このように、個人事業主の休業損害には、複雑な法的問題が絡んでおり、争いとなることも少なくありません。
適切な休業損害額を獲得するためには、交通事故に詳しい弁護士の力を借りるべきであるといえます。
弁護士法人心岐阜法律事務所では、交通事故に力を入れて取り組んでおりますので、岐阜で交通事故でお悩みの方は、ぜひご相談ください。
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