過失割合で揉めたときの証拠収集
1 過失割合の解決は容易でない
過失割合の内容は賠償額に大きく影響します。
被害者側にも過失がある場合、損害賠償額から被害者の過失割合分を差し引かなければなりません。
例えば、損害額300万円、被害者側の過失10%である場合、損害額300万円の10%にあたる30万円を差し引いた270万円が加害者から支払われることになります。
金銭が関わってくるため、被害者加害者ともに、過失割合については慎重に検討したいと考えることが通常です。
また、過失割合で揉める場合は、事故態様についての認識がお互いに食い違っていることも少なくなく、感情面でも簡単には譲歩できないという事案はよくあります。
このように賠償額や感情面の点から、通常、過失割合の解決は容易ではありません。
2 過失割合について争う場合は証拠が大切
過失割合を決める際は、通常、事故当時の事故態様と過去の裁判例を照らし合わせて検討します。
当時の事故態様の認識に食い違いがある場合には、証拠により事故態様を特定していく必要があります。
したがって、事故発生から早い時期に、以下に挙げるような証拠をできるかぎり確保しておくことが、納得のいく過失割合とするために重要となります。
3 画像記録
ドライブレコーダーや防犯カメラに事故前後の動画が記録されていれば、事故態様を裏付ける有力な証拠となります。
ただし、ドライブレコーダーも防犯カメラも短期間のうちに上書きされてしまうため、証拠を保全しておく必要があります。
ドライブレコーダーの場合、早めにSDカードを引き抜いてデータをコピーしておいたり、また、店舗に設置された防犯カメラである場合には、早急に開示を求めるべきですが、開示に応じてくれなければ、とりあえず対象部分となるデータの保存を申し出たり、弁護士に早期に介入してもらうなどの対応が求められます。
4 刑事記録
警察に診断書を提出して人身事故扱いとなっている場合、警察は、当事者の指示説明に基づき、事故現場の状況を図面化します。
これを実況見分調書といいます。
実況見分調書には、相手方に気づいた地点、ブレーキをかけた地点、停止した地点などの情報が記載され、その内容は中立的な警察が作成されたものとして、事故態様を裏付ける有力な証拠となります。
もっとも、必ずしも、こちらの主張と整合するものが作成されるとは限りません。
事実と異なり、相手方の言い分に沿うものが作成される場合には、実況見分調書が状況を正確に反映していないことなどを示す必要があるため、実況見分時には、ご自身でも現場の状況を写真撮影しておくとよろしいかと思います。
人身事故扱いでない場合には、実況見分調書は作成されず、物件事故報告書が作成されます。
物件事故報告書も参考にすることがありますが、実況見分調書と異なり略図が記載されるにとどまること、また、大部分を黒塗りされたものが開示されることが多いことから、必ずしも事故態様を裏付ける証拠になるとはいえません。
5 車両の損傷状況
当事者が主張する事故態様と、車両の損傷部位・形状等との整合性も重要な点といえます。
事故によってできた車両の傷やへこみから、どのような衝突の仕方だったのか、鑑定で明らかになることもあるからです。
したがって、当事者双方の車両について、車両の損傷部位・形状の写真を撮影しておくべきであるといえます。
なお、警察が撮影した写真は、必ずしも刑事記録に添付されるとは限りませんし、警察がこちらの求めに応じて写真を開示することは通常ありませんので、警察任せにしないよう注意が必要です。
6 目撃者
これまで挙げたものと異なり客観的な証拠ではありませんが、利害関係のない目撃者であれば信用性は高いといえ、その証言内容などは事故態様を裏付ける有力な証拠となります。
事故から時間が経つほど目撃者の記憶も曖昧になっていくので、目撃者がいる場合には早めに連絡しておく必要があります。
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