高次脳機能障害で働けなくなった場合のQ&A
高次脳機能障害で働けなくなった場合、どのような後遺障害等級が認定される可能性がありますか?
どの程度働けなくなったかによりますが、後遺障害の等級として別表第1の1級や2級、別表第2の3級、5級、7級及び9級のいずれかが認定される可能性があります。
1級から3級は全く働けなくなった場合を想定しています。
このうち、1級及び2級は要介護状態の場合であり、常時介護を要する場合には1級が、随時介護を要する場合には2級が認定される可能性があります。
また、3級は、「終身労務を服することができないもの」とされています。
5級、7級、9級は全く働けない程度ではないものの、労働がある程度制限される場合を想定しています。
具体的には、5級は「特に軽易な労務以外の労働に服することができないもの」、7級は「軽易な労務以外の労務に服することができないもの」、9級は「服することができる労務が相当な程度に制限されるもの」とされています。
高次脳機能障害で働けなくなった場合の後遺障害申請で注意すべきことはありますか?
高次脳機能障害の後遺障害申請では、「神経系統の障害に関する医学的意見」及び「日常生活状況報告」という書類を提出します。
これらの書類は、認知・情緒・行動障害の有無や程度などの参考にされ、それら障害によってご本人の日常生活に対してどの程度支障生じているか確認します。
そのため、高次脳機能障害の後遺障害等級の程度を判断するにあたりとても重要です。
このうち、「神経系統の障害に関する医学的意見」は医師に作成していただきます。
ただ、医師はご本人の日常生活状況をすべて把握しているわけではなく、ご本人の状態が適切に書類に反映されない可能性がありますし、実際の状態よりもかなり控えめに記載されてしまうケースも珍しくありません。
そこで、ご家族から医師に対して、事故前後でどのような違いが生じているか、就労先との関係でトラブルなど生じているかなど、具体的エピソードを交えてご説明されるとよいと思います。
また、ご本人の具体的な就労状況や支障内容を示すため、職場の同僚や上司に陳述書を作成いただくことも効果的です。
高次脳機能障害で働けなくなった場合、加害者側に対してどのような請求をすることができますか?
高次脳機能障害により労働能力が失われるまたは減退する場合、本来、将来得られたはずの収入が減少するとして、その減収相当分を賠償請求することが可能です。
これを後遺障害逸失利益といいます。
後遺障害逸失利益の計算では、後遺障害により労働能力がどの程度喪失されるか(これを「労働能力喪失率」といいます)が問題となります。
この点、後遺障害等級の程度によって目安とされる喪失率が設けられており、例えば、1級から3級までは喪失率100%、5級は79%、7級は56%、9級は45%とされています。
このように、後遺障害等級がひとつ異なるだけで、目安とされる労働能力喪失率が大きく異なるため、適切な等級認定を獲得することがとても重要です。
そのほかに後遺障害慰謝を請求することができますし、また、後遺障害等級の程度によっては将来介護費や家屋改造費なども請求することもできます。
高次脳機能障害で適切な等級認定を獲得し、十分な補償を受けるには、等級認定基準の正確な理解やノウハウが求められるため、交通事故に強い弁護士にご相談されることをお勧めします。
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