交通事故における慰謝料と通院日数の関係
1 交通事故における慰謝料と通院日数の関係
交通事故で怪我をして通院すると慰謝料の賠償請求をすることができます。
しかし、通院日数が少ないと慰謝料の金額が少なくなることがあります。
そのため、痛みを我慢して通院しない場合、その症状が改善しないばかりでなく、適切な補償を得ることもできなくなります。
適切な補償を得るため、慰謝料の算定基準に通院日数がどのように関係するか、具体的に見てみましょう。
2 自賠責基準と通院日数との関係
自賠責基準は、自賠責保険が定める基準であり、120万円を上限枠とする最低保障基準としての性格を持ちます。
自賠責基準の計算式は、「4300円×2×実通院日数」(令和2年4月1日以降の事故の場合)です。
ただし、「2×実通院日数」の部分は、治療期間の範囲内に限定されます。
つまり、「2×実通院日数」と「治療期間」の少ない方を掛けます。
したがって、自賠責基準では、通院日数が多ければ慰謝料額も多くなる関係にありますが、一定の限度があることになります。
例えば、3か月(90日)通院し、実通院日数が50日である場合、「2×実通院日数」よりも「通院期間」の方が少ないです。
よって、「4300円×2×50日」とならず、「4300円×90日=38万7000円」が慰謝料額となります。
3 弁護士基準と通院日数との関係
弁護士基準は、「損害賠償額算定基準(「赤い本」といいます。)」や「交通事故損害賠償額算定基準(「青本」といいます。)」掲載の算定表を用いて算定する基準です。
弁護士が交渉する際には、この基準を参考にすることが多いです。
弁護士基準は、自賠責基準と異なり、原則、通院期間の長さで慰謝料額を算定します。
ただし、通院頻度が少ない場合には、慰謝料算定における通院期間が修正され、慰謝料が減額されることもあります。
赤い本の別表Ⅱ(むちうち症で他覚症状がない場合等)を用いる場合には実通院日数の3倍、別表Ⅰ(別表Ⅱ以外)を用いる場合には実通院日数の3.5倍を慰謝料算定の通院期間とされることがあります。
また、青本では、実通院日数の3.5倍を慰謝料算定の通院期間とされることがあります。
具体例で考えてみましょう。
例えば、むち打ち症で3か月(90日)通院し、実通院日数が10日である場合、赤本別表Ⅱでは通院期間に照らし53万円が慰謝料額の目安となります。
ただし、通院期間を修正される場合には、「10日×3=30日」を慰謝料算定の通院期間とみなし、1か月の通院期間に相当する19万円が慰謝料額の目安となります。
4 弁護士基準における修正通院期間の争い方
保険会社は、通院日数が少ないと通院期間を修正して慰謝料を算定すべきであると主張してくることが少なくありません。
しかし、通院日数が少なくても、修正通院期間を画一的に適用すべきではありません。
あくまで実際の通院期間による算定を原則とすべきであり、通院期間の修正は例外にすぎません。
保険会社が修正通院期間の主張をしてきた場合には、通院期間の修正が必要なほど通院が長期にわたるか、症状、治療内容、通院頻度を踏まえ通院期間の修正が必要・相当といえるか、などの観点からその主張の適否を慎重に検討する必要があります。
例えば、症状によっては通院して治療を行うより自宅で安静にしていた方が治療効果が高いと考えられるような場合には、通院期間の修正は不適当といえるため、積極的に争っていく必要もあります。
5 弁護士に相談
適切な慰謝料額を得るためには、交通事故に精通した弁護士にご依頼されるのがよろしいかと思います。
賠償交渉でお困りの際は、お気軽に弁護士法人心 岐阜法律事務所までご連絡ください。