葬儀費用等の損害賠償
1 葬儀費用等
死亡事故の場合に発生する葬儀費用等については,社会通念上相当と認められる範囲で損害賠償請求することができます。
ここでいう葬儀費用等には,葬儀費用のほか,49日までの法要費用,仏壇・位牌購入費用,墓地購入・墓石購入などの費用が含まれます。
他方,香典返しは,損害に含まれないと考えられています。
2 葬儀費用等の金額の目安
裁判実務では,葬儀費用等につき一定の定額化がなされています。
実務で用いられる,「損害賠償額算定基準」(「赤本」ともいいます)では原則150万円,「交通事故損害額算定基準」(「青本」ともいいます。)では,130万円から170万円が基準とされています。
実際の裁判では,「赤本」を用いることが多いため,150万円の範囲内か否かが,一応の目安と考えられます。
なお,裁判例では,定額化の対象を葬儀費用のみとし,それとは別に,仏壇購入費用,墓地・墓石購入費用を認めるものもあります。
3 葬儀費用が目安を超える場合
葬儀費用等の現実の支出額,被害者の年齢及び遺族の状況等を考慮し,150万円を超える金額を葬儀費用等として認められる場合もあります。
例えば,高校生2名が死亡した事案につき,事故態様が悪質であり,社会的関心を集めたこと,被害者が15歳の少女であるから葬儀が大規模なものにならざるをえないことなどから,各々およそ180万円~210万円の実額葬儀費を認めました。
4 葬儀費用等の請求権者
葬儀費用等を現実に支出した方は,その固有の損害として,賠償請求できます。
仮に,葬儀費用等を相続財産から支出した場合には,各相続人が相続分に応じた負担部分を損害として賠償請求できます。
いずれの場合でも,葬儀費用等の金額の立証資料が必要となりますので,支出を裏付ける領収書はしっかり保管しておく必要があります。